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「マイノリティ」とは何か?①

update:2021-05-04

専業主婦はマイノリティ?それともマジョリティ?

当サイトで初めてのコラムになりますが、これはこのサイトにおける恒久的なテーマとして扱っていきたいものでもあります。

マイノリティと、マジョリティ。

この2つを分かつものとは何か?というお話です。
今回はサンプルとして、男女同権における普遍的な話題である「専業主婦」について取り上げてみます。

なお、ここでは定義として、「家庭において家事および育児に専念し、家計へ影響する収入活動をしていない女性」を専業主婦と呼ぶものとします。

さて、この専業主婦ですが、一般的に男女同権の議論においては、

・社会の動向に加わる機会が少ない
・ゆえに世の中に対する発言権が小さい

という点から、マイノリティである、という見方をされることが、SNSを中心として多く見受けられます。

しかし、ここで重要なポイントとして注目したいことがあります。

それは、
「専業主婦がマイノリティであるのは、『本人が専業主婦である状態に不満を持っている』という条件があってこそ、ではないだろうか?」
という点です。

ん?どういうこと?と思われる方もいらっしゃると思うので、順を追ってご説明します。

(続く)

意識は統一されるべき、という風潮

専業主婦である現状に不満を抱く女性が少なからず居るのは確かです。
家事や育児を、夫もしくは他の家族と分担し、仕事あるいは他の自己実現に向けた活動の時間を持ちたい、という方ですね。

とはいえ、専業主婦であることに違和感を覚えず、むしろ生き甲斐を感じているという女性も、実際にいらっしゃいます。
自ら専業主婦でいることを選ぶ、あるいは望んでいる女性もです。

ですが、夫婦や家族のあり方における議論の傾向として、そうした女性は、

「家父長制の虜にされている」
「自分が虐げられていることに気づいていない」
「幸せであると思い込まされている」

などという指摘を受けて、場合によっては男性に対し媚びへつらっているなどとして中傷されるケースさえ見受けられます。

これは「個々の多様性」という、フェミニズムにおいてもよく話題に挙がる点からしても、とても奇妙に思われました。

なぜ女性が、同じ女性から攻撃されなければならないのか?
専業主婦であることが嫌だという人がいたとしても、そのままでいたいという人まで否定する必要があるのか?
価値観は人それぞれでよいではないか?

という点に疑問を持ち、いろいろな方にお話をうかがった中で、一つの結論が浮かび上がってきました。

それは、

「『専業主婦は辛い立場でありマイノリティである』という意識が、全ての女性の統一見解でないと都合が悪いから」

といったものです。
さらにひらたく言ってしまうと、

「専業主婦であることに満足している女性がいると、専業主婦をマイノリティとは呼べなくなってしまうので、そのような女性は排除しよう」

という流れに他なりません。

何故、このような極端な考えになってしまうのか?
それは、このコラムの表題である「マイノリティとは何か?」に関係してきます

(続く)

特定の立場をマイノリティと呼ぶことの限界

マイノリティとは何か?

よくマイノリティは、その立場を主語として表されます。
すなわち、

「フェミニストはマイノリティ」
「LGBTQはマイノリティ」
「障害者はマイノリティ」
「シングルファミリーはマイノリティ」
「専業主婦はマイノリティ」

といった感じにです。
マイノリティは社会的に弱者であり、発言の通りにくい弱い存在である、という認識を明確に示すために、このように統一された立場を主語とすることで、あたかもそれぞれが統一の見解を持ったグループであるかのように示されます。

ですが、前述の通り、必ずしもそういう訳ではありません。

現状に満足している専業主婦もいるし、そうでない人もいる。
周りから祝福され平穏な毎日を過ごすフェミニストもいれば、一切の理解を得られず声を潜めて暮らす人もいる。
著名になり裕福な生活を送る障害者もいれば、生活に困窮し手助けも容易に得られない人もいる。

それぞれの立場でも、自己実現を果たした人と、そうでない人がいるはずです。
そしてしばしば、前者を「自分たちの仲間ではない」と考える人の影が見え隠れします。

専業主婦の話で言うならば、

望まずに仕方なく専業主婦でいる人 → マイノリティ(弱者)
望んで専業主婦でおり現状に不満の無い人 → マジョリティ(強者)

となり、「専業主婦=マイノリティ」という式が成り立たなくなります。

そうなると、心無く浴びせられる言葉として、

「専業主婦で満足してる人だっているのに、なんでお前はそうじゃないの?」

などと言われたりした結果、その矛先が「望んで専業主婦でいる人」に向けられているのではないでしょうか。

***


話を表題に戻しつつまとめるなら、
「マイノリティという表現を、『専業主婦』などの特定の立場に対して使うのには限界があり、また、多様な価値観とも矛盾する」
という結論に結びつけられるでしょう。

フェミニストの全員が、常に同じ意見でなくてもいいように、主婦の全員が、同じことを幸せだと感じ、同じことに不満を持たなくてもいい。

もしそれを強要し、感覚を違える人間を指差して「お前は仲間ではない」と言ってしまうのなら、それはマイノリティが最も忌み嫌う、同調圧力になってしまいます。

そうした圧力から逃れて自分らしく生きるためであったはずの場所で、気づけば新しいルールを作り、それに縛られることで安心し、ルールを逸脱する人間を否定・非難したりはしていないでしょうか。

立場や肩書をもってマイノリティを名乗るのではなく、自分自身はどういった点でマイノリティだと感じるのか、ということを、よく自分に向き合って考えてみることも必要なのではないでしょうか。

(了)