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アート引越センターの引越現場で妊婦社員が破水 「社内教育に努める」

update:2022-01-13

まず申し上げたいのは、こういったニュースを取り上げて「フェミニストが望んだ世界だろう」と切り捨てることは、男女の対立以外に何も生まないのでやめましょう、ということです。

そういう物言いをされる方が実際に居ないとは申しませんが、それは女性の総意ではありませんし、ましてや実際に現場で働いて苦労されている方々の声だとは到底思えないからです。



という点を踏まえた上で。

妊娠し、仕事は身体に負担の少ない作業のみにして欲しいと要望を出していた引越し業者に勤める女性が、実際には重労働への従事を余儀なくされて破水してしまった、というニュースがありました。



A子さんは階段作業があるとわかった数日前にも、支店長に「せめて人数を増やして欲しい」と要望したが、「シフト決めはほかの担当者がやっているので、どうしようもできない」と言われたという。



A子さんの友人が話す。



「破水した後、病院に駆け込んだA子はそのまま入院し、今も病院で療養中です。妊娠19週で胎児が体外に出てきたら命は救えない。22週を越えればかろうじて助かるかもしれないが、将来的に障害が残ってしまう可能性が高いとか。当初、医師から『ほぼ諦めるしかない』と宣言されて、ショックを受けていました」



アート社に問い合わせると、次のように回答した。

「年末3日間の配車については、A子(回答は実名)が妊娠している事実を知らない者が配車しており、A子から支店長(実名)に相談があったことは事実です。12月27日と28日の作業については、A子を運転業のみとし、A子を除くメンバーで引越作業にあたるように配車・配員を変更しております。12月29日の作業については、女性の単身者様の引越で家財量も通常の単身者様と比べても非常に少なかったため、A子とも協議のうえ、A子と別の1名のスタッフの2名という配車・配員としました



ただ、同社社員は「A子さんは3日間とも運転だけではなく、引越作業にも携わっていた」と証言する。



さらにアート社は「その中で、妊婦の勤務に対して最大限の配慮を行っておりました。しかしながら、このような状態になったことは誠に残念でなりません。同様のことが起きないように社内での教育に努めたいと思います」と回答した。

アート社は引越会社の中でも率先して「働き方改革」に力を入れ、女性社員が主体となって働きやすい環境を目指す「Weチャレンジ」という女性活躍推進プロジェクトも行ってきた。今後、どのような対策をとるのか、注目される。



記事本文より抜粋)



この話、個人的に注目したいのは、

「社員が作業に同意していたか否かに関わらず、事故は起きる」

という点でした。



記事中には、破水が起きた際の作業に関しては、A子さんと協議の上だった、とあります。



この部分はおそらく、

「上司の命令なら逆らえないだろう」

「大きな声で出来ませんとは言いにくいはずだ」

「パワハラではないのか」


という意見が多いのではと思います。



ただ、もう一点気になったのは、A子さんがまだ妊娠19週という、お腹もさほど大きくはなっていない時期だったという点です。



もちろん安定期前ですので、身体的な負担が軽いなどとは思いませんが、もしこれが本当に協議し同意の上で、彼女も本当に、

「そのくらいの作業なら大丈夫だろう」

と納得した上で起こった事故だったのだとしたら、誰の責任になるのだろう?と思ったのです。



そうなると、妊娠中の女性スタッフに関しては、本人と協議するのではなく、本人の意志に関わらず危険が予想される作業からは会社が強制的に外す、という考え方が必要になってくるのではないかと。



でも、この辺りは、作業内容にもよるとは思いますが、逆に

「私は働きたいのに、妊娠を理由に仕事を奪われた」

という話が出てこないか、ということを考えてみたりもしました。



本人の希望を取るか、リスクを考慮するか。

企業には難しい対応が求められているようですね。